改正航空法(ドローン規制)で求められる許可・承認が必要となるケースとその基準の全体構造
改正航空法に基づく無人航空機(ドローン)の飛行に関する許可・承認申請についての解説シリーズ5回目です。
前回の記事で、審査では、①無人航空機の機能・性能、②操縦者の飛行経験・技能等、③安全確保のための体制、の3つの観点から「基本的な基準」と「飛行形態に応じた追加基準」への適合性について判断するため、それに応じた必要書類が求められることが分かりました。
(前回の記事「改正航空法で求められる3つ安全確保の観点と2つの基準の設け方、これらと申請添付書類との関係」はこちらです。)
そうなると、気になるのは、「飛行形態に応じた追加基準」ですね。
飛行形態に応じた追加基準はどういう構造になっているのか、さっそく見ていきましょう。
●まずは条文どおりに飛行形態に応じた分類がされ、これに応じた基準が設定されます。
- 1. 進入表面等の上空の空域又は地表・水面から150m以上の高さの空域における飛行を行う場合
- 2. 人又は家屋の密集している地域の上空における飛行を行う場合
- 3. 夜間飛行を行う場合
- 4. 目視外飛行を行う場合
- 5. 人又は物件から30mの距離が確保できない飛行を行う場合
- 6. 催し場所上空の飛行を行う場合
- 7. 危険物の輸送を行う場合
- 8. 物件投下を行う場合
● さらに、第三者の上空を飛行するかどうかにより追加的基準があります。
具体的には、上記8つ飛行形態のうち、
- 2. 人又は家屋の密集している地域の上空における飛行を行う場合
- 5. 人又は物件から30mの距離が確保できない飛行を行う場合
- 6. 催し場所上空の飛行を行う場合
に第三者の上空を飛行するか否かにより、更に場合分けがされます。
何故、この3つの飛行形態のみ第三者の上空を飛行するか否かが問われるかと言えば、それ以外の飛行形態は、第三者の上空を飛行する蓋然性が低い、ないしそのような観点とは別の観点から安全確保を求めているからです。
● さらに、この3つの飛行形態で第三者の上空を飛行させる場合は、最大離陸重量が25kg以上かどうかで場合分けされます(勿論、さらなる追加基準ありです)
● 以上を表にまとめると、、
● まとめ
第三者の上空を飛行させることになる蓋然性が高い飛行形態のときには、第三者上空を飛行させるための更なる追加基準が設けられています。
このことから、基本的には、「第三者の上空は飛ばさないで下さい」、というスタンスであることがわかります。
これは考えて見れば当たり前の話で、ドローンは落ちるのが前提で、地上の人・物の安全を確保する目的で改正航空法が作られたわけですからね。
●飛行マニュアルの重要性
ところで、「第三者の上空は飛ばさないで下さい」、というスタンスではあるものの、例えば、つぎのようなケースでは、無人航空機の飛行に関する許可・承認の申請は必要となるでしょうか?
人口密集地ではないものの人通りはある程度ある場所で、目視飛行を行った場合等です。
すなわち、飛行禁止エリアではなく、且つ法で定められた飛行方法による飛行を行う場合です。
結論は、申請は不要です。第三者の上空を飛行させることになったとしても、です。
これは、法の限界の話です。
改正航空法は最低限のルールを定めたにすぎません。
こういう場面は、公法ではなく私法(民法等)の問題、あるいは飛行させる者のマナーと良識の問題が問われるのです。
ここで重要となるのが、「飛行マニュアル」です。
飛行マニュアルは、自主規制ルールです。
法は最低限の事しか定めていない。だかこそ、自分たちで安全を確保するルールを定め守ろうという自律精神が大切になります。
しっかりとした団体には必ずしっかりとした安全ガイドライン(飛行マニュアル)が存在します。
●次回の記事
今回は「飛行形態に応じた追加基準」の全体構造をみました。
次回からは、個別に飛行形態一つ一つの基本的基準・追加基準を、機体の性能、操縦者の技能、安全確保体制の3つの観点から見て行きましょう。1回目は、目視外飛行です。