行政指導と法律の関係
海岸法に基づく地方公共団体の海岸管理条例等でドローンの規制が行なわれることもあります。
然しながら、そのような海岸管理条例において(ドローンの飛行を制限できるような)行為の制限規定をそもそも定めていない場合もあります。
そのようなケースは条例という法規ではなく、行政指導により制限しております。
したがってドローン規制も行政指導により行うことも十分に考えられます。
そこで、今回は行政指導、とりわけ行政指導と法律との関係について説明いたします。
行政指導と法律の関係
行政指導の弊害を避けるために、学説においては、行政指導のうち少なくとも相手方の権利自由を実質的に制限する規制的指導には、法律の根拠を必要とする見解が有力になってきました。
しかし、行政指導の最大の効用は法律の不備欠陥を補って行政庁が新しい行政需要に機敏に対応し行政責任を全うすることにあります。
それなのに、行政指導にいちいち法律の根拠を要求すると、かえってそのメリットが失われてしまいます。とりわけ、ドローンの飛行に関する規制等の社会的規制の分野で、法定外の行政指導が許されないとすると、行政が硬直化し、有害な行為や未解明のリスクが放置されたままになり、社会的弊害を増大させることになります。
判例も、法定外の指導であっても、指導内容が法令に違反せず、また実質上強制に等しい不当な手段を用いないかぎり許されるとしてきました(東京高判昭和55年9月26日)。
行政指導の限界
法定外の行政指導が現行法上許容されるとしても、それには次の限界があります。
①行政指導は当該行政機関の組織法上の権限(所掌事務)の範囲内でなければ行うことが出来ません。行政手続法は「行政機関の任務または所掌事務の範囲を逸脱してはならない」(32Ⅰ)としています。
②行政指導も「法律優位」の原則に服します。法の明文や一般原則に抵触するような指導は許されません。
③行政指導は強制にわたることがあってはなりません。相手方が指導に従う意思がないのに執拗にこれを強要したり、許認可の権限を背景に強圧的態度で指導の遵守を求めるのは違法です(行政手続法32−34)。
④行政指導は相手方が放棄することのできる利益の制限を求めるものでなければなりません。
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。