金商法の解釈

金商法で規定されているルールを個別事案に適用するにあたっては金商法の「解釈」が必要となります。例えば「金融商品取引業」の範囲や、これから考える「少人数私募」の「同一種類」の有価証券の範囲等を画するのは容易ではなく、その意味で金商法の解釈のあり方を考えることは実務的にも重要であります。

金商法は民事特別法、刑事特別法および行政規制法の性質を併せ持ちます。ここでは、刑法・行政法における解釈論を参照します。もっとも金商法の中核は行政規制法であることから、特に金融規制法(金融に関する行政規制法)の解釈のあり方を説明いたします。

刑法の解釈論

類推解釈は禁止されるが、拡張解釈は許容されるとし、その限界として、言葉の「可能な意味」の範囲とか、国民の予測可能性の範囲を問題にすることに加え、保護法益や処罰の必要性との考量が必要であるとされています(前田)。証取法違反の刑事事件に係る最高裁判決は、前田説に近い「実質的解釈」をとっていると理解することができるように思われます。

行政法の解釈論

法規的解釈
学理的解釈ー文理解釈
      論理解釈ー拡張解釈
           縮小解釈
           変更解釈
           類推解釈
留意事項として、
・立法目的・趣旨を考えること
・他の法令との関係に注意すること
・沿革・外国の立法例
・社会における正義と公平の観念
・公共の福祉との適合
が挙げられます。

金融法規制の解釈のあり方

●文理解釈
金融法規制の違反に対しては刑事罰が設けられていることが多いことから、基本的には刑法の解釈論に近い態度をとることが適当であります。そして刑法や行政法規の解釈にあたっては、法的安定性や予測可能性の観点から、私法である民法の解釈に比べても、法令の「文言」が重要であり、解釈の出発点は法令の「文言」であるべきです。
●実質的解釈
法令の「文言」を解釈する際には、法令の趣旨目的などを踏まえることが必要です。法令の趣旨目的の探知資料としては、立法資料とともに、現在の社会情勢をも考慮する必要があります。このような観点から、金商法の解釈にあたっては、投資者保護および資本市場健全性の確保という立法目的をふまえることが必要です。
ただし、いかに法令の趣旨目的を踏まえても、法令の文言の枠を超える解釈をすることは、法解釈の名において実質的に立法するに等しいことから許容されません。
●脱法行為への対応
脱法行為は法令の趣旨目的に照らして不当であるとの実質的な価値判断を前提とするものであることから、これを法令違反と判断する誘引が働くことを否定できません。
然しながら、金商法には独禁法17条のような明示的な脱法行為の禁止規定は存在せず、脱法行為も形式的には法令の文言の枠内の行為であることから、金融法規制の法的安定性と予測可能性を確保する観点からは、脱法行為を法令違反と捉えるのはあくまで例外的な事象であると考えるべきです。
このような観点から、脱法行為は、脱法目的であるとの主観的要素及び法令の趣旨目的に照らして高い不当性が認められる客観的状況がある場合に限り、法令違反と判断することが許容されると考えるべきです。
(参考文献)
松尾直彦「金融商品取引法」(第3版)

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